「塔その物の光景は今でもありありと眼に浮べる事が出来る。前はと問われると困る、後はと尋ねられても返答し得ぬ。ただ前を忘れ後を失したる中間が会釈もなく明るい。あたかも闇を裂く稲妻の眉に落つると見えて消えたる心地がする。倫敦塔は宿世の夢の焼点のようだ。」(夏目漱石『倫敦塔』)